海外資産・国際税務
2026年3月6日4分で読める2

2026年税制改正の富裕層への影響:相続税・所得税・法人税の最新動向

田中 雅彦

税理士・公認会計士

2026年税制改正の富裕層への影響:相続税・所得税・法人税の最新動向

2026年税制改正の概要

2025年12月に閣議決定された2026年度税制改正大綱は、富裕層に対して複数の重要な変更をもたらします。本記事では、富裕層に特に影響の大きい改正点を詳しく解説します。

相続税・贈与税の改正

生前贈与の加算期間延長(段階的施行)

2023年度税制改正で決定された相続前の生前贈与の加算期間延長が、2026年に向けて段階的に施行されています。

改正の内容:

  • 改正前:相続前3年以内の贈与を相続財産に加算
  • 改正後:相続前7年以内の贈与を相続財産に加算(2031年に完全施行)

2026年時点の適用:

2026年1月1日以降の相続については、2022年1月1日以降の贈与が加算対象となります。

富裕層への影響:

相続直前の駆け込み贈与の節税効果が薄れるため、より早期からの計画的な贈与戦略が必要になります。

相続時精算課税の基礎控除(定着)

2024年1月から導入された相続時精算課税の年間110万円基礎控除が定着しています。

活用のポイント:

  • 毎年110万円分は相続財産に加算されない
  • 暦年贈与との比較で選択が重要
  • 不動産・株式の贈与に特に有効

所得税の改正

金融所得課税の見直し

富裕層の金融所得(株式・配当・利子等)に対する課税強化が継続的な課題となっています。

現在の状況(2026年時点):

  • 株式等の譲渡所得・配当所得:申告分離課税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
  • 金融所得課税の税率引き上げ(25〜30%への引き上げ)は引き続き検討中

富裕層への影響:

金融所得課税の強化が実施された場合、株式売却のタイミング・配当政策の見直しが必要になります。

高所得者の所得税負担の強化

所得税の最高税率(45%)に加え、住民税(10%)・復興特別所得税(2.1%)を合わせると、最高実効税率は55.945%に達します。

2026年の注目点:

  • 給与所得控除の上限(195万円)の見直し議論
  • 特定支出控除の拡充の可能性
  • 退職所得課税の見直し(勤続年数5年以下の短期退職の課税強化は2022年施行済み)

法人税の改正

中小企業優遇税制の見直し

中小企業(資本金1億円以下)に適用される軽減税率(年800万円以下の所得に15%)の適用要件が厳格化される方向で議論が続いています。

現在の状況:

  • 大法人の100%子会社は中小企業の軽減税率が不適用
  • 複数の中小法人を設立して軽減税率を重複適用する節税スキームへの規制強化

グローバルミニマム税(第2の柱)の施行

2024年度から施行されたグローバルミニマム税(年間売上高7.5億ユーロ超の多国籍企業に対して最低税率15%を確保する制度)の実務対応が本格化しています。

富裕層への影響:

大規模な事業グループを持つ富裕層・オーナー経営者は、海外子会社の税務コンプライアンスコストが増加します。

暗号資産(仮想通貨)課税の動向

暗号資産の申告分離課税への移行議論

現在、暗号資産の売却益は雑所得として総合課税(最高税率55.945%)が適用されています。業界団体・富裕層から申告分離課税(20.315%)への移行を求める声が高まっています。

2026年の状況:

  • 申告分離課税への移行は引き続き検討中
  • 損失の繰越控除(3年間)の導入も議論中
  • NFT・DeFiの課税ルールの明確化が進む

国際課税の強化

国外財産調書・財産債務調書の提出義務強化

国際的な税務コンプライアンスの強化が続いており、国外財産調書・財産債務調書の提出義務の周知・執行が強化されています。

2026年の注意点:

  • CRS(共通報告基準)による自動情報交換の活用強化
  • 国外財産調書の不提出に対するペナルティの厳格化

富裕層が2026年に取るべき対策

短期的な対策(2026年中)

1. 生前贈与の加速 — 加算期間延長の完全施行前に計画的な贈与を実施

2. 金融所得の実現タイミングの最適化 — 税率引き上げ前の売却を検討

3. 国外財産調書の適切な提出 — 申告漏れのリスクを排除

中長期的な対策

1. 相続時精算課税の積極活用 — 年間110万円の基礎控除を毎年活用

2. 法人を活用した所得分散 — 個人の高税率を回避

3. 海外資産の適切な申告 — CRSによる情報交換を前提とした透明な管理

まとめ:2026年税制改正の富裕層への影響まとめ

| 改正項目 | 影響 | 対策 |

|---------|------|------|

| 生前贈与加算期間延長 | 節税効果の低下 | 早期からの計画的贈与 |

| 金融所得課税強化(検討中) | 税負担増加の可能性 | 売却タイミングの最適化 |

| グローバルミニマム税 | 海外子会社の税務コスト増 | コンプライアンス体制の整備 |

| 暗号資産課税の明確化 | 申告義務の明確化 | 適切な申告・記録管理 |

| 国外財産調書の厳格化 | ペナルティリスク増大 | 適切な申告の徹底 |

税制は毎年改正されるため、最新情報を常にキャッチアップし、税理士と連携して対策を見直すことが重要です。

#税制改正#2026年#相続税#所得税#富裕層
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