相続税対策
2026年3月25日4分で読める2

配偶者居住権を活用した相続税節税と二次相続対策

山田 恵子

税理士・相続専門家

配偶者居住権を活用した相続税節税と二次相続対策

配偶者居住権:2020年新設制度を活用した相続税節税の最前線

2020年4月1日から施行された「配偶者居住権」制度は、配偶者が相続後も自宅に住み続けることを法的に保護しつつ、相続税の節税にも活用できる画期的な制度です。本記事では、配偶者居住権の仕組みと節税戦略を詳しく解説します。

配偶者居住権の基本

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者が、相続開始時に居住していた建物について、終身または一定期間、無償で使用・収益できる権利です。

配偶者居住権の特徴:

  • 配偶者が自宅に住み続けることができる
  • 配偶者居住権は譲渡・売却できない(一身専属権)
  • 配偶者が死亡すると消滅する

配偶者居住権の設定方法

配偶者居住権は、以下の方法で設定できます。

1. 遺産分割協議: 相続人全員の合意により設定

2. 遺言: 被相続人が遺言で設定

3. 家庭裁判所の審判: 遺産分割の審判で設定

配偶者居住権の相続税評価

評価の仕組み

配偶者居住権が設定された建物は、「配偶者居住権」と「所有権(負担付き)」に分けて評価されます。

配偶者居住権の評価額:

配偶者居住権の評価額 = 建物の相続税評価額 − 負担付き所有権の評価額

負担付き所有権の評価額:

負担付き所有権の評価額 = 建物の相続税評価額 × 残存耐用年数から存続年数を控除した年数 / 残存耐用年数 × ライフテーブルに基づく係数

評価の具体例

例えば、相続税評価額2,000万円の建物について、70歳の配偶者が配偶者居住権を取得した場合:

| 項目 | 金額 |

|------|------|

| 建物の相続税評価額 | 2,000万円 |

| 配偶者居住権の評価額 | 約1,200万円 |

| 負担付き所有権の評価額 | 約800万円 |

配偶者居住権を活用した節税戦略

二次相続対策としての活用

配偶者居住権の最大の節税メリットは、二次相続対策にあります。

通常の相続(配偶者が自宅全体を取得)の場合:

一次相続で配偶者が自宅(評価額2,000万円)を取得すると、二次相続(配偶者が亡くなった時)では、自宅2,000万円が課税対象となります。

配偶者居住権を活用した場合:

一次相続で配偶者が配偶者居住権(評価額1,200万円)を取得し、子が負担付き所有権(評価額800万円)を取得します。二次相続では、配偶者居住権は消滅するため、自宅は課税対象となりません。

節税効果: 二次相続の課税財産が2,000万円から0円に減少(配偶者居住権消滅分)

小規模宅地等の特例との組み合わせ

配偶者居住権が設定された土地についても、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)を適用できます。

適用要件:

  • 配偶者が配偶者居住権を取得すること
  • 配偶者が相続開始前から居住していること

配偶者居住権のデメリットと注意点

デメリット

1. 売却・担保設定が困難: 配偶者居住権が設定された建物は、所有者(子など)が単独で売却・担保設定することが困難です。配偶者の同意が必要となります。

2. 配偶者の介護・施設入居時の問題: 配偶者が介護施設に入居した場合、配偶者居住権を消滅させることができません(原則として)。建物を売却・活用したい場合に支障が生じることがあります。

3. 固定資産税の負担: 配偶者居住権者(配偶者)は、建物の固定資産税を負担する義務があります。

設定を慎重に検討すべきケース

  • 将来的に自宅を売却・活用する可能性がある場合
  • 配偶者が高齢で介護施設への入居が見込まれる場合
  • 相続人間の関係が良好でない場合

配偶者居住権の登記

配偶者居住権は、登記することで第三者に対抗できます。登記は義務ではありませんが、所有者(子など)が建物を売却した場合に配偶者居住権を主張するためには、登記が必要です。

まとめ

配偶者居住権は、配偶者の居住を保護しつつ、二次相続対策として有効な節税手段です。ただし、設定にはデメリットもあるため、家族の状況・将来の計画を踏まえて慎重に検討することが重要です。相続専門の税理士・弁護士と相談の上、最適な活用方法を選択してください。

#相続税#配偶者居住権#二次相続#小規模宅地#節税
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