相続税対策
2026年3月16日14分で読める3,005

相続税の計算方法:基礎控除と税率の仕組み

編集部

相続税の計算方法:基礎控除と税率の仕組み

# 相続税の計算方法:基礎控除と税率の仕組みを完全解説

リード文

資産1億円以上の富裕層・企業オーナー・高収入専門職の皆様にとって、相続税は避けて通れない重要な課題です。大切な資産を次世代に円滑に引き継ぐためには、相続税の仕組みを正確に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。本記事では、相続税の計算方法の基本から、基礎控除や税率の仕組み、さらには富裕層向けの具体的な節税対策、よくある失敗例までを専門的かつ分かりやすく解説します。相続税に関する不安を解消し、賢い資産承継を実現するための一助となれば幸いです。

相続税とは?その基本を理解する

相続税とは、個人の死亡によって財産が相続人や受遺者に移転する際に課される税金のことです。この税金は、故人の財産を無償で取得することに対する課税であり、富の再分配という側面も持ち合わせています。相続税の課税対象となる財産は多岐にわたり、現金、預貯金、有価証券、土地、建物といったプラスの財産だけでなく、借入金や未払金などのマイナスの財産も考慮されます。

相続税の課税対象となる財産

相続税の課税対象となる財産は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

1. 本来の相続財産: 故人が所有していた現金、預貯金、株式、不動産(土地・建物)、自動車、貴金属、骨董品など、経済的価値のあるすべての財産です。

2. みなし相続財産: 故人の死亡によって相続人が取得する財産で、本来の相続財産ではないものの、相続税法上、相続財産とみなされるものです。代表的なものに、死亡保険金や死亡退職金があります。これらには一定の非課税枠が設けられています。

3. 生前贈与加算の対象となる財産: 故人が亡くなる前一定期間内(相続開始前3年以内、令和6年1月1日以降の贈与は段階的に7年間に延長)に、相続人に対して贈与された財産は、相続財産に加算されて相続税の計算対象となります。これは、相続税を回避するために駆け込みで贈与を行うことを防ぐための制度です。

一方で、墓地や仏壇、仏具など、社会通念上祭祀に用いられる財産や、国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産などは非課税財産となり、相続税の課税対象にはなりません。

相続税の計算の基本的な流れ

相続税の計算は、複雑に感じられるかもしれませんが、以下の4つのステップで順序立てて進めることで理解しやすくなります [1]。

1. 各人の課税価格の計算: 相続や遺贈によって財産を取得した人ごとに、その財産の価額を評価し、非課税財産や債務、葬式費用などを差し引いて、各人の課税価格を算出します。

2. 課税遺産総額の算出: 各人の課税価格を合計し、そこから相続税の基礎控除額を差し引いて、相続税が課される遺産の総額(課税遺産総額)を計算します。

3. 相続税の総額の算出: 課税遺産総額を法定相続分で按分し、それぞれの金額に相続税率を適用して算出した税額を合計することで、相続税の総額を求めます。

4. 各人の納付税額の計算: 相続税の総額を、実際に財産を取得した割合に応じて各人に割り振り、さらに各種税額控除(配偶者の税額軽減など)を適用して、最終的な各人の納付税額を算出します。

この流れを理解することが、相続税対策の第一歩となります。

相続税の計算方法:4つのステップで徹底解説

ここでは、相続税の具体的な計算方法を4つのステップに分けて詳しく解説します。

ステップ1:課税価格の計算

相続税の計算は、まず相続人それぞれが取得した財産の「課税価格」を算出することから始まります。課税価格は、本来の相続財産、みなし相続財産、生前贈与加算の対象となる財産を合計し、非課税財産、債務控除、葬式費用を差し引いて計算されます。

* 本来の相続財産: 現金、預貯金、株式、不動産など。

* みなし相続財産: 死亡保険金や死亡退職金など。これらには「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります [2]。

* 生前贈与加算の対象となる財産: 相続開始前3年以内(令和6年1月1日以降の贈与は段階的に7年間に延長)に被相続人から贈与された財産。

* 非課税財産: 墓地、仏壇、仏具など。

* 債務控除: 故人が残した借入金や未払金など。

* 葬式費用: 葬儀にかかった費用。

ステップ2:課税遺産総額の算出と基礎控除の仕組み

各人の課税価格が算出されたら、次に「課税遺産総額」を計算します。これは、相続税が実際に課される遺産の総額であり、以下の計算式で求められます [1]。

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額

ここで重要なのが「基礎控除額」です。基礎控除額は、相続税が課税されるかどうかのボーダーラインとなる金額であり、以下の計算式で算出されます [1]。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

この基礎控除額を超えない限り、相続税は発生せず、相続税の申告も不要となります。富裕層の相続においては、この基礎控除額をいかに活用するかが節税対策の鍵となります。

#### 法定相続人の範囲と養子の扱い

基礎控除額の計算において「法定相続人の数」は非常に重要です。法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、配偶者は常に法定相続人となります。配偶者以外の法定相続人には、以下の順位があります。

1. 第一順位: 故人の子(子が既に死亡している場合は孫)

2. 第二順位: 故人の直系尊属(父母、祖父母など)

3. 第三順位: 故人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に死亡している場合は甥姪)

養子がいる場合、法定相続人の数に含められる人数には制限があります [3]。

* 被相続人に実子がいる場合: 養子のうち1人までを法定相続人に含めることができます。

* 被相続人に実子がいない場合: 養子のうち2人までを法定相続人に含めることができます。

養子縁組は、基礎控除額を増やすことで相続税を軽減する有効な手段の一つですが、節税目的のみの養子縁組は税務署から否認されるリスクもあるため、慎重な検討が必要です [4]。

ステップ3:相続税の総額の算出と税率の仕組み

課税遺産総額が算出されたら、次に相続税の総額を計算します。このステップでは、課税遺産総額を法定相続分で按分し、それぞれの金額に相続税率を適用します [1]。

1. 法定相続分に応ずる取得金額の計算: 課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものと仮定して、各法定相続人ごとの法定相続分に応ずる取得金額を計算します。

2. 相続税の速算表の適用: 各法定相続人ごとの法定相続分に応ずる取得金額に、以下の「相続税の速算表」に示される税率を乗じて算出税額を求めます [5]。

| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |

| :------------------------- | :--- | :----- |

| 1,000万円以下 | 10% | - |

| 1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |

| 3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |

| 5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |

| 1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |

| 2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |

| 3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |

| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |

3. 相続税の総額の計算: 各法定相続人ごとの算出税額を合計したものが、相続税の総額となります。

相続税は累進課税制度を採用しており、財産の額が大きくなるほど税率も高くなります。最高税率は55%にも達するため、富裕層にとっては非常に大きな負担となる可能性があります。

ステップ4:各人の納付税額の計算と税額控除

最後に、相続税の総額を、実際に財産を取得した各相続人等の課税価格に応じて割り振り、各種税額控除を適用して、最終的な納付税額を計算します [1]。

各相続人等の税額 = 相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

この各相続人等の税額から、以下の税額控除を差し引くことができます。

* 配偶者の税額軽減: 配偶者が相続する財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度です。

* 未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、贈与税額控除など。

#### 相続税額の2割加算

財産を取得した人が、被相続人の配偶者、子、父母以外の者である場合、その人の相続税額は2割加算されます。

これらの控除を適切に適用することで、最終的な納付税額を大きく減らすことが可能です。特に配偶者の税額軽減は、富裕層の相続において最大限活用すべき制度と言えるでしょう。

富裕層・企業オーナー向け!具体的な節税対策と試算例

資産1億円以上の富裕層や企業オーナーにとって、相続税対策は単なる節税ではなく、事業承継や資産保全の観点からも極めて重要です。ここでは、具体的な節税対策とその試算例をご紹介します。

生前贈与の活用

生前贈与は、相続財産を減らすことで将来の相続税を軽減する基本的な対策です。

* 暦年贈与(年間110万円の基礎控除): 年間110万円の基礎控除を活用し、長期間にわたって計画的に贈与を行うことで、非課税で多くの財産を移転できます。

* 相続時精算課税制度の活用: 2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。令和6年1月1日以降は、この制度に年間110万円の基礎控除が創設され、より使いやすくなりました。

不動産を活用した評価減

不動産は、現金や有価証券に比べて相続税評価額が低くなる傾向があるため、富裕層の相続税対策において非常に有効な手段です。

* 賃貸不動産の活用: 土地を貸し付けたり、アパートやマンションを建設して賃貸したりすることで、土地や建物の評価額をさらに下げることができます。

* 小規模宅地等の特例: 居住用や事業用の宅地について、一定の要件を満たせば、評価額を最大80%減額できる特例です。

* タワーマンション節税の現状と注意点: 2023年の最高裁判決により、実勢価格と相続税評価額が著しく乖離する場合、税務署が評価額を再計算できることが示されました [6]。今後は、実勢価格との乖離が大きい不動産については、節税効果が期待できない可能性が高まっています。

生命保険の非課税枠の活用

死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります [2]。現預金を生命保険に加入することで、この非課税枠を活用し、相続財産を圧縮することができます。

資産管理会社の設立

資産管理会社を設立し、個人資産を法人に移管することで、所得税や相続税の節税、事業承継の円滑化などのメリットが期待できます。

節税効果の試算例

#### ケース1:法定相続人3人、遺産総額3億円の場合

* 前提: 被相続人:夫、相続人:妻、子2人(計3人)。遺産総額:3億円(すべて現金)。

* 基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

* 課税遺産総額: 3億円 - 4,800万円 = 2億5,200万円

* 配偶者の税額軽減適用後: 妻の相続税は0円(1億6,000万円まで非課税)。

* 最終的な納付税額: 子2人分の相続税 = 1,190万円 × 2 = 2,380万円

対策なしの場合、2,380万円の相続税が発生します。

#### ケース2:法定相続人2人、遺産総額5億円の場合(不動産活用例)

* 前提: 被相続人:夫、相続人:妻、子1人(計2人)。遺産総額:5億円(現金2億円、賃貸アパート(土地・建物)3億円)。

* 基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

* 不動産評価減: 賃貸アパートの評価額が実勢価格の60%に評価減されたと仮定(3億円 → 1億8,000万円)。

* 再計算後の課税遺産総額: (現金2億円 + 不動産1億8,000万円) - 4,200万円 = 3億3,800万円

* 配偶者の税額軽減適用後: 妻の相続税は0円。

* 最終的な納付税額: 子1人分の相続税 = 5,060万円

不動産を活用することで、課税遺産総額を圧縮し、相続税を大幅に軽減できる可能性があります。これらの試算はあくまで一例であり、個別の状況によって税額は大きく変動します。専門家による詳細なシミュレーションが不可欠です。

相続税対策で注意すべき点とよくある失敗

相続税対策は、多額の資産を扱うため、一歩間違えると大きな失敗につながる可能性があります。ここでは、特に注意すべき点とよくある失敗例を解説します。

申告漏れや評価誤り

相続財産の申告漏れや評価誤りは、税務調査の対象となり、追徴課税や加算税が課される原因となります。正確な財産把握と適切な評価が不可欠です。

安易な節税対策によるリスク

節税目的のみと判断される養子縁組や、実態のない資産管理会社の設立、過度なタワーマンション節税などは、税務署から否認されるリスクを伴います。最高裁判決によってタワーマンション節税の一部が否認された事例は、安易な節税対策のリスクを明確に示しています [6]。

二次相続を考慮しない対策

一次相続で配偶者に財産を集中させすぎると、二次相続で子が多額の相続税を負担することになる可能性があります。長期的な視点に立ち、一次相続と二次相続の両方を考慮したバランスの取れた対策が必要です。

税務調査への対応

相続税の申告後、税務署による税務調査が行われることがあります。税務調査に適切に対応するためには、日頃から財産に関する資料を整理し、贈与契約書などの証拠書類を保管しておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 相続税の申告期限はいつまでですか?

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です [7]。この期限までに、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告書を提出し、納税を完了する必要があります。

Q2: 養子縁組をすると相続税は安くなりますか?

養子縁組は、相続税の基礎控除額を増やす効果があるため、相続税を安くする可能性があります [4]。ただし、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までという制限があります [3]。

Q3: 不動産の評価額はどのように決まりますか?

不動産の相続税評価額は、土地と建物で評価方法が異なります。土地は、国税庁が定める路線価方式または倍率方式によって評価されます。建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

Q4: 生前贈与はどのくらいまで非課税で行えますか?

生前贈与には、年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。また、相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの贈与が非課税となります。

Q5: 相続税対策はいつから始めるべきですか?

相続税対策は、早ければ早いほど良いとされています。特に、生前贈与や不動産の購入・組み換え、生命保険の活用などは、時間をかけて計画的に実行することで、より大きな節税効果が期待できます。また、税制改正のリスクや、家族構成の変化なども考慮に入れる必要があるため、専門家である税理士に相談し、長期的な視点での対策プランを立てることをお勧めします。

まとめ

相続税対策は、富裕層・企業オーナーの皆様にとって、大切な資産を次世代に円滑に引き継ぐための重要な経営戦略です。基礎控除や税率の仕組みを正確に理解し、生前贈与、不動産活用、生命保険の非課税枠など、多角的な視点から対策を講じることが求められます。特に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった制度は、大きな節税効果をもたらす可能性があります。しかし、安易な節税対策は税務署から否認されるリスクや、二次相続で思わぬ負担が生じる可能性もあります。専門家である税理士と連携し、ご自身の資産状況や家族構成に合わせた最適な対策を早期に計画的に進めることで、将来の不安を解消し、賢い資産承継を実現できるでしょう。

References

[1] 国税庁. 「No.4152 相続税の計算」. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm)

[2] 国税庁. 「No.4114 死亡保険金を受け取ったとき」. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm)

[3] 国税庁. 「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4170.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4170.htm)

[4] チェスター. 「養子縁組で相続税は安くなる?デメリットや注意点も解説」. [https://chester-tax.com/encyclopedia/9011.html](https://chester-tax.com/encyclopedia/9011.html)

[5] 国税庁. 「No.4155 相続税の税率」. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)

[6] Yahoo!ニュース. 「富裕層の露骨な“節税“に国税庁が怒り心頭! その額 500億円超…最高裁で“タワマン節税“にNO! 判決の裏に「税の公平」」. [https://news.yahoo.co.jp/articles/8cfb0fac608dabda778db6e19ab2ceb0e394d77e](https://news.yahoo.co.jp/articles/8cfb0fac608dabda778db6e19ab2ceb0e394d77e)

[7] 国税庁. 「No.4205 相続税の申告と納税」. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm)

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