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2026年3月25日4分で読める2

富裕層のための生前贈与と資産移転:暦年贈与・相続時精算課税の最適な使い分け

高橋美咲

税理士・相続診断士

富裕層のための生前贈与と資産移転:暦年贈与・相続時精算課税の最適な使い分け

# 富裕層のための生前贈与と資産移転:暦年贈与・相続時精算課税の最適な使い分け

はじめに:2024年改正で変わった生前贈与の常識

2024年1月から、生前贈与に関する税制が大きく改正されました。従来の「相続前3年以内の贈与は相続税の課税対象」というルールが「相続前7年以内」に延長されたほか、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。

この改正により、生前贈与の戦略を見直す必要が生じています。本記事では、改正後の制度を踏まえた最適な生前贈与戦略を解説します。

暦年贈与の仕組みと2024年改正

暦年贈与の基本

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額に対して贈与税を課税する制度です。

贈与税の基礎控除:年間110万円

年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません。この非課税枠を毎年活用することで、長期的に大きな資産を非課税で移転できます。

贈与税の税率(一般税率):

| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |

|-----------------|------|-------|

| 200万円以下 | 10% | 0円 |

| 300万円以下 | 15% | 10万円 |

| 400万円以下 | 20% | 25万円 |

| 600万円以下 | 30% | 65万円 |

| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |

| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |

| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |

| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |

2024年改正:相続前7年以内の贈与加算

改正前(〜2023年): 相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象

改正後(2024年〜): 相続開始前7年以内の贈与は相続税の課税対象

ただし、7年以内の贈与のうち、4〜7年前の贈与については100万円を控除した残額が加算されます。

改正の影響:

  • 相続直前の駆け込み贈与の節税効果が低下
  • 長期的な計画的贈与の重要性が増加
  • 早期からの贈与開始が有利

暦年贈与の節税効果(長期シミュレーション)

前提:毎年110万円を子ども2人に贈与(20年間)

| 項目 | 金額 |

|------|------|

| 年間贈与額 | 220万円(子ども2人×110万円) |

| 20年間の総贈与額 | 4,400万円 |

| 贈与税 | 0円(基礎控除内) |

| 相続税の節税効果(税率30%の場合) | 約1,320万円 |

相続時精算課税制度の仕組みと2024年改正

相続時精算課税の基本

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度です。

従来の制度(〜2023年):

  • 累計2,500万円まで贈与税ゼロ
  • 2,500万円超は一律20%の贈与税
  • 贈与した財産はすべて相続税の課税対象(精算)

2024年改正後の制度:

  • 年間110万円の基礎控除が新設(相続財産への加算なし)
  • 累計2,500万円の特別控除は維持
  • 2,500万円超は一律20%の贈与税

改正後の相続時精算課税のメリット

年間110万円の基礎控除の新設が最大の改正点です。この110万円は相続税の課税対象にもなりません。

例:相続時精算課税で毎年110万円を贈与(10年間)

| 項目 | 金額 |

|------|------|

| 年間贈与額 | 110万円 |

| 10年間の総贈与額 | 1,100万円 |

| 贈与税 | 0円 |

| 相続税への加算 | 0円 |

| 節税効果(相続税率30%) | 約330万円 |

相続時精算課税の活用が有利なケース

1. 値上がりが期待される資産の贈与:株式・不動産など、将来値上がりする資産を早期に贈与することで、値上がり分を相続税の課税対象から外せます。

2. 収益物件の贈与:賃貸不動産を贈与することで、その後の家賃収入が受贈者(子・孫)の所得となり、贈与者の所得税・住民税を減らせます。

3. 事業承継:自社株を後継者に贈与する場合、相続時精算課税と事業承継税制を組み合わせることで節税効果を高められます。

暦年贈与 vs 相続時精算課税:選択基準

比較表

| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税 |

|------|---------|-------------|

| 年間非課税枠 | 110万円 | 110万円(改正後) |

| 相続財産への加算 | 7年以内は加算 | 110万円超は加算 |

| 適用対象者 | 誰でも | 60歳以上→18歳以上の子・孫 |

| 一度選択すると | 毎年選択可能 | 取り消し不可 |

| 有利な状況 | 長期的な少額贈与 | 高額・値上がり資産の贈与 |

選択の判断基準

暦年贈与が有利なケース:

  • 相続まで10年以上ある(7年加算の影響を受けにくい)
  • 毎年110万円以内の少額贈与を継続したい
  • 相続時精算課税の取り消し不可リスクを避けたい

相続時精算課税が有利なケース:

  • 値上がりが期待される資産(自社株・不動産)を贈与したい
  • 相続まで7年以内の可能性がある(暦年贈与の7年加算を避けたい)
  • 2,500万円超の大型贈与を一括で行いたい

贈与税の特例制度

住宅取得等資金の贈与税非課税

父母・祖父母から子・孫への住宅取得資金の贈与は、一定額まで非課税です。

非課税限度額(2026年現在):

  • 省エネ等住宅:1,000万円
  • 一般住宅:500万円

教育資金の一括贈与非課税

祖父母から孫への教育資金の一括贈与は、1,500万円まで非課税です(金融機関の専用口座経由)。

結婚・子育て資金の一括贈与非課税

父母・祖父母から子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与は、1,000万円まで非課税です(金融機関の専用口座経由)。

まとめ:生前贈与の最適化戦略

2024年改正後の生前贈与は、長期的な計画が一層重要になりました。

生前贈与最適化のポイント:

1. 早期から計画的に暦年贈与を開始する(7年加算の影響を最小化)

2. 値上がり資産は相続時精算課税で早期移転する

3. 住宅・教育・結婚資金の特例非課税制度を積極活用する

4. 贈与契約書を毎年作成して贈与の証拠を残す

5. 税理士と連携して相続税・贈与税の総合的な節税計画を立てる

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