海外資産・国際税務
2026年2月25日2分で読める3

租税条約の活用:二重課税を防止して海外投資の税負担を最小化する方法

伊藤 誠

税理士・中小企業診断士

租税条約の活用:二重課税を防止して海外投資の税負担を最小化する方法

租税条約とは何か

租税条約は、二国間で締結される国際条約で、各国の課税権を調整することで二重課税を防止し、脱税・租税回避を防止することを目的としています。日本は2026年時点で90以上の国・地域と租税条約を締結しており、海外投資を行う際の税務上の基本的なルールとなっています。

主要国との租税条約の内容

租税条約では、配当・利子・使用料(ロイヤルティ)に対する源泉税率が規定されています。条約がない場合、多くの国では配当・利子・使用料に対して20〜30%の源泉税が課されますが、租税条約により税率が軽減されます。

相手国配当源泉税率利子源泉税率使用料源泉税率
米国10%(一般)/ 0%(持株10%以上)10%(一般)/ 0%(金融機関等)0%
英国10%(一般)/ 0%(持株10%以上)10%(一般)/ 0%(金融機関等)0%
シンガポール5%(持株25%以上)/ 15%(一般)10%10%
中国10%10%10%
オーストラリア10%(持株80%以上)/ 15%(一般)10%5%

外国税額控除との関係

租税条約に基づいて現地で課税された税金は、外国税額控除として日本の所得税・法人税から控除できます。外国税額控除の上限は「日本の税額 × 国外所得 / 全世界所得」で計算されます。租税条約と外国税額控除を組み合わせることで、二重課税を最小化できます。

BEPS多国間条約(MLI)の影響

OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの一環として、2018年から「BEPS多国間条約(MLI)」が発効しています。MLIにより、既存の租税条約に導管会社(ペーパーカンパニー)を通じた租税回避を防止するための規定が追加されています。特に、「主要目的テスト(PPT)」により、租税条約の適用が主要な目的の一つが租税上の利益の取得であると認められる場合、条約の適用が否認されることがあります。

まとめ:租税条約の活用は国際税務の基本

租税条約の活用は、海外投資の税負担を最小化するための基本的な手段です。主要国との租税条約の内容を理解し、外国税額控除と組み合わせることで、二重課税を防止できます。ただし、MLIによる租税回避防止規定の強化により、実質的な事業活動のない導管会社を通じた租税条約の濫用は認められなくなっています。国際税務の専門家と連携して、適正な租税条約の活用を行うことをお勧めします。

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