不動産節税
2026年3月3日3分で読める3

不動産の組み替え・買い替えによる節税戦略:特定の居住用財産・事業用資産の買換え特例

田中雅彦

税理士・公認会計士

不動産の組み替え・買い替えによる節税戦略:特定の居住用財産・事業用資産の買換え特例

不動産売却益の課税と繰り延べの仕組み

不動産を売却すると、売却益(譲渡所得)に対して課税されます。

不動産の譲渡所得税率:

  • 短期譲渡(所有期間5年以下):39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
  • 長期譲渡(所有期間5年超):20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

高額の不動産売却では、数百万円〜数千万円の税負担が生じることがあります。これを軽減・繰り延べるための特例が「買換え特例」です。

居住用財産の特例(マイホームの売却)

1. 3,000万円特別控除

自宅(居住用財産)を売却した場合、売却益から3,000万円を控除できます。

要件:

  • 現に居住している家屋・土地の売却
  • 売却した年の前年・前々年に同特例を使用していないこと
  • 売却相手が配偶者・直系血族・同族会社でないこと

2. 軽減税率の特例

所有期間が10年を超える居住用財産の売却益には、軽減税率が適用されます。

| 売却益 | 税率 |

|-------|------|

| 6,000万円以下の部分 | 14.21%(所得税10.21% + 住民税4%) |

| 6,000万円超の部分 | 20.315% |

3,000万円特別控除と軽減税率は併用可能です。

3. 居住用財産の買換え特例(課税の繰り延べ)

自宅を売却して新たな自宅を購入する場合、一定の要件を満たせば売却益への課税を繰り延べることができます。

要件(主なもの):

  • 売却した居住用財産の所有期間が10年超
  • 売却した年の前年から翌年末までに新居を取得
  • 新居の床面積が50㎡以上
  • 売却価格が1億円以下

課税繰り延べの仕組み:

買換え特例を適用すると、売却益への課税は「将来、新居を売却するまで」繰り延べられます。ただし、課税が免除されるわけではなく、将来の売却時に課税されます。

事業用資産の買換え特例(80%課税繰延)

事業用不動産(賃貸物件・オフィス等)を売却して新たな事業用不動産を購入する場合、売却益の80%について課税を繰り延べることができます。

課税繰延の計算:

  • 売却価格 > 購入価格の場合:売却益の80%が繰り延べ
  • 売却価格 ≦ 購入価格の場合:売却益の全額が繰り延べ

要件(主なもの):

  • 売却した資産が事業用(賃貸・オフィス等)であること
  • 購入した資産も事業用であること
  • 売却した年の前年から翌年末までに新資産を取得
  • 取得した資産を1年以内に事業の用に供すること

活用例:

地方の賃貸物件(評価額低下・空室増加)を売却し、都市部の賃貸物件を購入する「不動産の組み替え」に活用できます。売却益の80%の課税が繰り延べられるため、手元資金を多く残して新物件に投資できます。

不動産組み替えの総合戦略

1. 収益性の低い物件から高い物件への組み替え

地方の空室率が高い物件や老朽化した物件を売却し、都市部の収益性の高い物件に組み替えることで、資産の収益性を高めながら課税を繰り延べることができます。

2. 相続対策を兼ねた組み替え

相続税評価額の高い土地(更地等)を売却し、評価額の低い収益物件(アパート・マンション等)に組み替えることで、相続税の節税と収益性の向上を同時に実現できます。

3. 法人への移転との組み合わせ

個人が保有する不動産を法人に売却(または現物出資)する際に、買換え特例を活用することで、売却益への課税を軽減できる場合があります。

まとめ

不動産の買換え特例は、売却益への課税を繰り延べることで、手元資金を多く残して新たな不動産に投資できる強力な節税手法です。ただし、要件が複雑で、特例を適用した場合の将来の課税(繰り延べた税金)も考慮する必要があります。不動産の組み替えを検討する際は、税理士・不動産専門家と連携して、長期的な視点で計画を立てることをお勧めします。

#不動産買換え#課税繰延#居住用財産#事業用資産#節税
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