不動産節税
2026年3月15日4分で読める2

不動産の贈与:評価額の低い不動産を活用した生前贈与戦略

田中 雅彦

税理士・公認会計士

不動産の贈与:評価額の低い不動産を活用した生前贈与戦略

不動産贈与が節税に有効な理由

不動産の贈与は、現金の贈与と比較して大きな節税効果を持ちます。その理由は、不動産の贈与税・相続税評価額が実際の市場価格(時価)より低く計算されるからです。

評価額の差:

  • 土地(路線価評価):時価の約80%
  • 建物(固定資産税評価):時価の約50〜70%

例えば、時価1億円の不動産でも、相続税・贈与税の評価額は7,000〜8,000万円程度になることが多く、2,000〜3,000万円分の節税効果が生まれます。

不動産の贈与税評価額の計算

土地の評価方法

路線価方式(市街地の土地):

評価額 = 路線価 × 地積 × 各種補正率

路線価は国税庁が毎年7月に公表し、時価の約80%水準に設定されています。

倍率方式(農村部の土地):

評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

建物の評価方法

建物の贈与税評価額は固定資産税評価額と同額です。固定資産税評価額は時価の50〜70%程度に設定されています。

賃貸不動産の評価(さらに低くなる)

賃貸中の不動産(貸家・貸家建付地)は、さらに評価額が低くなります。

貸家建付地の評価:

評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

貸家の評価:

評価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は通常30%のため、満室の賃貸マンションの建物評価額は固定資産税評価額の70%となります。

不動産贈与の方法と税務

1. 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)

毎年110万円以下の贈与は贈与税が非課税です。不動産の持分を毎年少しずつ贈与することで、段階的に節税しながら財産を移転できます。

持分贈与の例:

評価額3,300万円の不動産を30年かけて贈与する場合:

  • 毎年110万円分の持分を贈与(3.3%ずつ)
  • 30年で全持分を無税で移転完了

注意点:

定期贈与と認定されないよう、毎年贈与契約書を作成し、金額・時期を変えることが重要です。

2. 相続時精算課税制度

60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度で、2,500万円まで贈与税が非課税(超過分は一律20%)です。

不動産贈与への活用:

  • 評価額2,500万円以下の不動産:贈与税ゼロで移転可能
  • 相続時に相続財産に加算されるが、贈与時の評価額で計算

2024年改正のポイント:

2024年1月以降、相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が追加されました。毎年110万円分は相続財産に加算されません。

3. 配偶者への不動産贈与(おしどり贈与)

婚姻期間20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与は、2,000万円まで贈与税が非課税です(基礎控除110万円と合わせて2,110万円まで非課税)。

適用要件:

  • 婚姻期間20年以上
  • 居住用不動産(または居住用不動産の取得資金)の贈与
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も居住継続

節税効果:

配偶者に自宅を贈与することで、相続財産を減らし、二次相続(配偶者死亡時の相続)の相続税を軽減できます。

不動産贈与の節税戦略

収益不動産の贈与

賃貸マンション・アパートなどの収益不動産を子に贈与することで、以下の節税効果が得られます:

1. 相続財産の減少:贈与後の家賃収入は子の財産となり、親の相続財産が増えない

2. 評価額の低さ:貸家建付地・貸家として低く評価される

3. 所得分散:子の所得として申告することで、累進課税の負担を軽減

建物のみ贈与・土地は貸す方法

建物のみを子に贈与し、土地は親が引き続き所有して子に賃貸(使用貸借)する方法です。

メリット:

  • 建物の評価額は低い(固定資産税評価額)
  • 土地の贈与税を回避
  • 子が家賃収入を得られる

注意点:

使用貸借(無償貸付)の場合、土地の評価は自用地評価(借地権割合の控除なし)となります。

低評価不動産の活用

以下の不動産は評価額が特に低くなるため、贈与に適しています:

| 不動産の種類 | 評価の特徴 | 節税効果 |

|------------|-----------|---------|

| 賃貸マンション | 貸家建付地・貸家評価で低くなる | 高い |

| 借地上の建物 | 底地権・借地権に分かれて低くなる | 高い |

| 山林・農地 | 固定資産税評価額ベースで低い | 中程度 |

| 旧耐震の古家 | 固定資産税評価額が低い | 中程度 |

不動産贈与の注意点とリスク

不動産取得税・登録免許税の負担

不動産の贈与を受けた側は、不動産取得税(固定資産税評価額の3〜4%)と登録免許税(固定資産税評価額の2%)を負担します。相続の場合(登録免許税0.4%)と比べて負担が大きくなります。

名義変更後の管理

贈与後は受贈者(子など)が不動産の管理・納税義務者となります。固定資産税の支払い、賃貸管理、修繕費用なども受贈者の負担となります。

贈与税の申告義務

110万円を超える贈与を受けた場合、翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告が必要です。申告漏れは加算税・延滞税のペナルティが課されます。

まとめ:不動産贈与の節税戦略チェックリスト

| 方法 | 非課税枠 | 適した状況 |

|------|---------|-----------|

| 暦年贈与(持分贈与) | 年間110万円 | 長期的な財産移転 |

| 相続時精算課税 | 2,500万円+年間110万円 | まとまった財産の移転 |

| 配偶者控除(おしどり贈与) | 2,000万円+110万円 | 配偶者への自宅移転 |

| 収益不動産の贈与 | 評価額の低さを活用 | 家賃収入の分散 |

不動産の生前贈与は、適切に活用すれば大きな節税効果をもたらします。ただし、贈与税・不動産取得税・登録免許税のバランスを考慮し、税理士に相談しながら最適な方法を選択することが重要です。

#不動産#贈与#生前贈与#相続税#節税
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