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2026年2月13日3分で読める2

医療費控除の高度な活用:セルフメディケーション税制・特定一般用医薬品との比較と最適選択

田中 雅彦

税理士・公認会計士

医療費控除の高度な活用:セルフメディケーション税制・特定一般用医薬品との比較と最適選択

はじめに

医療費控除は、年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に適用される所得控除です。2017年からはセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費の控除)も導入され、市販薬の購入費用でも控除が受けられるようになりました。本記事では、両制度の違いと最適な選択方法を解説します。

医療費控除とセルフメディケーション税制の比較

| 比較項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |

|---|---|---|

| 控除の対象 | 医療費全般(診察・薬・入院等) | スイッチOTC医薬品(特定一般用医薬品) |

| 控除額の計算 | 医療費 - 10万円(または所得の5%) | OTC医薬品購入費 - 1.2万円 |

| 最大控除額 | 200万円 | 8.8万円(購入費10万円の場合) |

| 適用条件 | なし | 健康診断・予防接種等の受診が必要 |

| 対象者 | 誰でも | 健康の保持増進に取り組む者 |

| 選択方式 | 両制度は選択適用(同年に両方は不可) | 同上 |

医療費控除の対象となる費用

医療費控除の対象となる費用は広範囲にわたります。

| 対象となる費用 | 具体例 | 注意点 |

|---|---|---|

| 診療・治療費 | 病院・歯科・眼科の診療費 | 審美目的は対象外 |

| 医薬品 | 処方薬・市販薬(治療目的) | 予防目的の市販薬は対象外 |

| 入院費 | 入院基本料・食事代 | 差額ベッド代は対象外(一部例外あり) |

| 不妊治療 | 体外受精・人工授精 | 2022年から保険適用拡大 |

| 歯科治療 | 虫歯治療・歯周病治療 | 審美目的のホワイトニングは対象外 |

| 介護費用 | 介護老人保健施設の費用 | 特別養護老人ホームの一部も対象 |

| 交通費 | 通院のための公共交通機関費 | タクシーは原則対象外(緊急時は可) |

高額医療費の控除計算例

ステップ1: 年間の医療費を集計する

家族全員(生計を一にする配偶者・親族)の医療費を合算できます。

ステップ2: 保険金等の補填額を差し引く

健康保険の高額療養費・入院給付金・医療保険の給付金は医療費から差し引きます。

ステップ3: 控除額を計算する

控除額 = 医療費合計 - 保険金等補填額 - 10万円(または所得の5%の低い方)

例:医療費合計50万円、保険金補填10万円、所得500万円の場合

控除額 = 50万円 - 10万円 - 10万円 = 30万円

節税額(税率33%)= 30万円 × 33% = 9.9万円

セルフメディケーション税制の活用

スイッチOTC医薬品(医師の処方薬から市販薬に転用された薬)の購入費が年間1.2万円を超えた場合、超過分(最大8.8万円)が控除されます。

スイッチOTC医薬品の例:

  • ロキソニンS(解熱鎮痛薬)
  • ガスター10(胃腸薬)
  • アレグラFX(アレルギー薬)
  • ニコチネルTTS(禁煙補助薬)

適用条件: 健康診断・予防接種・がん検診等を受けていることが必要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 医療費控除とセルフメディケーション税制を同じ年に両方申告できますか?

A1. 同じ年に両方を申告することはできません。どちらか一方を選択する必要があります。医療費が多い年は医療費控除、市販薬の購入が多い年はセルフメディケーション税制を選択するのが一般的です。

Q2. 美容目的の歯科矯正は医療費控除の対象になりますか?

A2. 大人の審美目的の歯科矯正は対象外ですが、子供の成長過程での歯科矯正(機能的な問題の治療)は対象となります。

Q3. 医療費控除を受けるために領収書の保管は必要ですか?

A3. 2017年分以降は、医療費控除の明細書を確定申告書に添付すれば領収書の提出は不要です。ただし、5年間の保管義務があります。

Q4. 高額療養費制度を利用した場合、医療費控除の計算はどうなりますか?

A4. 高額療養費制度で補填された金額は医療費から差し引いて計算します。高額療養費の支給が翌年になる場合は、支給された年に差し引きます。

Q5. 不妊治療の費用は全額医療費控除の対象になりますか?

A5. 体外受精・人工授精等の不妊治療費は医療費控除の対象です。2022年から保険適用が拡大されたため、保険適用分は高額療養費制度の対象にもなります。

まとめ:医療費の状況に応じて最適な控除を選択

医療費控除とセルフメディケーション税制は、年間の医療費・市販薬購入費の状況に応じて最適な方を選択します。高額な医療費がある年は医療費控除、市販薬の購入が多い年はセルフメディケーション税制が有利です。家族全員の医療費を合算して申告できるため、家族の医療費も漏れなく集計することが重要です。

Q&A よくある質問

Q

医療費控除とセルフメディケーション税制を同じ年に両方申告できますか?

A

同じ年に両方を申告することはできません。どちらか一方を選択する必要があります。医療費が多い年は医療費控除、市販薬の購入が多い年はセルフメディケーション税制を選択するのが一般的です。

Q

美容目的の歯科矯正は医療費控除の対象になりますか?

A

大人の審美目的の歯科矯正は対象外ですが、子供の成長過程での歯科矯正(機能的な問題の治療)は対象となります。

Q

医療費控除を受けるために領収書の保管は必要ですか?

A

2017年分以降は、医療費控除の明細書を確定申告書に添付すれば領収書の提出は不要です。ただし、5年間の保管義務があります。

Q

高額療養費制度を利用した場合、医療費控除の計算はどうなりますか?

A

高額療養費制度で補填された金額は医療費から差し引いて計算します。高額療養費の支給が翌年になる場合は、支給された年に差し引きます。

Q

不妊治療の費用は全額医療費控除の対象になりますか?

A

体外受精・人工授精等の不妊治療費は医療費控除の対象です。2022年から保険適用が拡大されたため、保険適用分は高額療養費制度の対象にもなります。

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