不動産節税
2026年3月14日3分で読める4,562

法人による不動産保有の節税メリットと設立戦略:個人保有との徹底比較

佐藤 健一

税理士・不動産鑑定士

法人による不動産保有の節税メリットと設立戦略:個人保有との徹底比較

個人保有 vs 法人保有:どちらが節税に有利か

不動産を個人で保有するか法人で保有するかは、税負担に大きな影響を与えます。

税率の比較

| 所得規模 | 個人(所得税+住民税) | 法人(法人税等) |

|---------|---------------------|--------------|

| 〜195万円 | 15% | 約23% |

| 195〜330万円 | 20% | 約23% |

| 330〜695万円 | 30% | 約23% |

| 695〜900万円 | 43% | 約23% |

| 900万円〜 | 53% | 約23% |

不動産所得が年間900万円を超える場合、法人化により税率が約30%ポイント低下します。

法人保有の主な節税メリット

1. 役員報酬による所得分散

法人が不動産収入を得て、役員報酬として配偶者・子・親族に分散支払いすることで、累進課税を回避できます。

例:不動産収入3,000万円を個人で受け取る場合

→ 所得税+住民税:約1,500万円(実効税率50%)

同収入を法人で受け取り、役員報酬を4人に分散する場合

→ 法人税+役員報酬の所得税:約700〜900万円(節税額600〜800万円)

2. 減価償却の任意計上

個人の場合、減価償却は強制適用ですが、法人の場合は任意計上が可能です。利益が多い年度に多く計上し、赤字年度は計上を控えることで、税負担を平準化できます。

3. 経費の幅が広がる

法人では、個人では経費にならない以下の支出を経費計上できます。

  • 役員社宅(自宅の家賃の一部を法人経費に)
  • 役員の生命保険料
  • 役員退職金の積立(小規模企業共済・経営セーフティ共済)
  • 福利厚生費(社員旅行・健康診断など)

4. 相続税対策

不動産を法人で保有することで、自社株の評価額を通じた相続税対策が可能になります。

不動産を直接相続させる場合と比べ、法人の株式として相続させることで、評価額の圧縮(非上場株式の評価方法)が適用される場合があります。

不動産法人の設立戦略

設立のタイミング

不動産法人の設立は、新規物件の取得前が最も有利です。既存の個人保有不動産を法人に移転する場合、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税が発生するためです。

法人の種類:株式会社 vs 合同会社

| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |

|------|---------|---------|

| 設立費用 | 約24万円 | 約10万円 |

| 社会的信用 | 高い | やや低い |

| 株式の相続 | 容易 | やや複雑 |

| 利益分配 | 持株比率に応じて | 定款で自由に設定 |

不動産管理・賃貸を目的とする場合、設立費用が低い合同会社も選択肢になります。

個人保有不動産の法人移転:コストと節税効果の比較

既存の個人保有不動産を法人に移転する場合、以下のコストが発生します。

  • 譲渡所得税:売却益に対して20.315%(長期譲渡)
  • 不動産取得税:固定資産税評価額の3〜4%
  • 登録免許税:固定資産税評価額の2%
  • 司法書士費用:数十万円

これらのコストと、法人化後の節税効果(年間数百万円)を比較し、回収期間が5〜7年以内であれば法人移転が有利と判断できます。

法人化の注意点:社会保険料の負担増

法人を設立すると、役員・従業員は社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入が必要になります。社会保険料は会社と個人で折半するため、法人・個人合わせた負担額が増加します。

社会保険料の増加分を考慮した上で、法人化の純粋な節税効果を計算することが重要です。

まとめ

不動産の法人保有は、年間不動産所得が900万円を超える場合に特に有効な節税手段です。役員報酬による所得分散、減価償却の任意計上、経費の幅の拡大、相続税対策を組み合わせることで、生涯の税負担を大幅に軽減できます。設立タイミングと法人の種類を慎重に選択し、税理士と連携した設計を行うことをお勧めします。

#法人#不動産#節税#役員報酬#相続税対策
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